LPガス自動車
LPガス(プロパンガス)は環境にやさしく、持ち運びが簡単なので、どこででも利用できる便利なエネルギーです。この特性を最大限に活かす先進的なシス テムが、開発され普及しつつあります。「より快適に・より経済的に・より環境にやさしく」を目指すLPガス(プロパンガス)の先進型システムが普及すれ ば、現在の生活水準を維持しながら、環境にやさしい日本を目指すことができます。
LPG自動車は、日本では1963年(昭和38年)から本格的に走り始め、その後、経済性などの理由により、タクシーを中心に広く普及してきました。
そして現在、LPガス(プロパンガス)が環境と人に優しく、騒音が少ない実用的な自動車用燃料として改めて注目される中、各自治体や配送事業者によるLPG自動車の積極的な導入が進められています。
一方、海外においてもLPG自動車は高い評価を得ており、特に環境問題に敏感な欧州各国では、国の優遇政策などもあり普及が進んでいます。
LPガス(プロパンガス)には、プロパンとブタンの2種類があります。プロパンは主に家庭用として使われ、ブタンは主に工業用などに多く使われています。 その主な違いは沸騰する温度(沸点)にあり、プロパンは-42℃で、ブタンは-0.5~-12℃です。現在の自動車用LPガス(プロパンガス)は、ブタン とプロパンの混合物で、自動車の始動性能を考慮し、その地域の気温に合わせ混合比率を調整しています。
(参考資料:「LPガス読本」日本LPガス団体協議会)
LPG自動車とは…?
日本国内のLPG自動車の歴史は、1940年(昭和15年)頃に、国内の油田や製油所で分離されたLPガス(プロパンガス)をガソリンの代替燃料として一部で使われたのが始まりです。
本格的にLPガス(プロパンガス)が自動車用燃料として使われはじめたのは、1963年(昭和38年)。その前年に始まった低温LPガス(プロパンガス) 輸入専用のオーシャンタンカーと国内受入基地の稼動に伴い、安定した供給が確保されたことが大きな要因でした。 そして、その経済性によりまずタクシー用燃料として急速に普及していきました。
今後も、LPG自動車のエンジンの効率化や低公害化が一層進み、乗用車・貨物車を問わず広く普及していくと考えられています。
また、ほかのクリーンエネルギ-(天然ガス、メタノール、電気など)自動車と比較すると、LPガス(プロパンガス)自動車には次の3つの特長があります。
(1)スタンド数が多い
LPガス(プロパンガス)スタンドが全国に約1,900ケ所あるのに対して、天然ガス58ケ所、メタノール57ケ所、電気69ケ所。
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(2)走行距離が長い
1回の燃料補給で走れる距離はディーゼル車と同じで、長距離運転にも堪えられます。
(3)経済的
車両価格や燃費は、ガソリン・ディーゼル並み。
このことにより、LPガス(プロパンガス)自動車は、ほかのクリーンエネルギ-自動車に比べ、実用的であるといえます。
LPG自動車の環境性
自動車の排気ガスは、黒煙や浮遊粒子状物質(SPM)による呼吸器系の病気や、窒素酸化物(NOx)や炭化水素(THC)を原因とするオゾン・過酸化物質(光化学スモッグ)による目や、のどなどへの痛みなど、地球環境や私たちの身体に直接悪影響をもたらします。
これに比べ、LPG自動車は、窒素酸化物の排出量が極めて少なく、黒煙や浮遊粒子状物質が全く出ません。LPG自動車は、環境問題に貢献する「クリーンエネルギー自動車」として、運輸省・環境庁や各都県においても評価が高まりつつあります。
運輸政策審議会総合部会環境小委員会が2000年6月付けで取りまとめた中間報告では、これまでただ排出ガスの規制のみを訴えてきた自動車環境対策のやり 方を改め、自動車の使用形態や使用燃料の特長、供給体制を踏まえた「環境にやさしい自動車」の開発普及の方向性を示しています。この中で、 大気汚染物質や気球温暖化物質による環境への負荷が少ない自動車を、環境自動車(グリーン自動車)と位置づけました。LPG自動車は、小型・中形トラック 及び乗用車の2部門において、21世紀初頭にかけて普及が期待される「グリーン自動車」として高い評価を得ました。
またLPG自動車は、排気ガスがクリーンであるだけでなく、エンジン音が静かで振動が少ないことも大きな特長です。エンジン音が静かなことは運転者のストレスを軽減し、宅配先での騒音問題を解決することから、運転者や消費者にメリットをもたらします。
全国に1,900ケ所のスタンドを持ち、かつ環境にやさしいので、LPG自動車は生協、宅配事業者、塵芥車(ゴミ回収車)も含めた配送車、幼稚園児等の送迎用マイクロバスなどその活躍の場は幅広く、今後ますますの普及が期待されています。
世界のLPG自動車事情
排気ガス問題への対応から、世界各国でLPG自動車の普及が進んでいます。LPG自動車は、世界で約400万台が走っており、日本はそのうち約30万台を占めています。
日本におけるLPG自動車普及率は0.4%ですが、特に環境問題に敏感なヨーロッパでは、国の優遇政策もあり、オランダでは全自動車数の8.6%に相当す る47万台、イタリアでは4.0%に相当する100万台のLPガス(プロパンガス)自動車が走行しています。またお隣の韓国では、LPガス(プロパンガ ス)の環境性と経済性に高い評価が集まり、わずか2~3年で100万台に届く勢いで普及しつつあります。日本ではタクシーやトラックに多いLPG自動車で すが、海外ではほとんどが自家用車と一部の商用車です。
また、ヨーロッパでは、LPガス(プロパンガス)エンジンの大型バスも実用化され、乗合バスとして利用されています。ディーゼル車に比べエンジンが小型化するので室内乗客のスペースが拡大し、黒煙を出さずエンジン騒音問題もなくなるという利点があります。
世界の大手自動車メーカーも積極的にLPG自動車を生産・販売しています。例えば、スウェーデンのボルボ社では、2001年から全ての車種にLPG自動車 を設定し、世界中で販売を開始しています。フランスのルノー社では、12車種を設定し、ヨーロッパで販売しています。アメリカのフォード社でも、人気のラ イトトラックを中心にLPG自動車を自社で生産しています。そのほとんどが普段はLPガス(プロパンガス)を利用して走り、燃料切れや始動時にはガソリン を使うという、1つのエンジンで2つの燃料を使えるバイフュ-エル車です。
またイギリスでは、英国王室各位が使用する公用車のうち、ロールスロイス・ファントムV、ダイムラー・リムジン、エジンバラ公のメトロキャブの3台が、 LPガス(プロパンガス)エンジンの自動車です。エリザベス女王は、公務の際、可能な限りこれらのLPG自動車を使用されます。
世界では、すでにLPG自動車はクリーンエネルギ-自動車の代名詞となりつつあるのです。